東京高等裁判所 昭和43年(ネ)2456号 判決
一、訴外神奈川県更生保護会連盟会長代理桑島一英が、控訴人に対し土地原形復旧保証金三五〇万円(以下単に本件保証金という)の返還請求権を有し、この債権を昭和三四年五月二七日付で訴外森春二に譲渡し、控訴人に対し同年八月一七日付文書でその通知をしたことおよび控訴人が同年八月一七日右文書に「横浜市役所・受付・昭和三四・八・一七・財・第六三七号」と表示した受付印を押し、その下に「P・M二・二〇」と時刻を記載したことは、当事者間に争いがない。
成立に争いのない甲第一号証、原審証人森春二の証言ならびに原審および当審(差戻前)における各被控訴人本人尋問の結果によれば、訴外森が同年六月二日右譲受にかかる控訴人に対する債権をさらに被控訴人に譲渡したことが認められる。控訴人は右債権譲渡は森と被控訴人との通謀による虚偽表示であると主張するけれども、そのような事実を認めるに足る証拠は存しない。そして森が同年八月一七日控訴人に対し文書で右債権譲渡の通知をし、控訴人が右文書に「横浜市役所・受付・昭和三四・八・一七・財第六三九号」と表示した受付印を押し、その下に「P・M四・二五」と時刻を記載したことは当事者間に争いがない。
二、〔証拠〕によれば、右各債権譲渡通知の文書(乙第二号証および同第三号証)に右のような受付印を押し時刻を記入したのは、地方公共団体である控訴人横浜市の文書受領権限のある市役所文書課係員が、同市役所の文書処理規定に基いてしたものであることが認められるのであつて、これは、本件上告審裁判所の判断が示すように、公署である横浜市役所において、前記各受付番号をもつて受けつけた事実を記入し、かつその受付の日時を記載したものであり、したがつて民法施行法第五条第五号に定める「公署ニ於テ私署証書ニ或事項ヲ記入シ之ニ日附ヲ記載シタルトキ」に該当し、右日附はいわゆる確定日附となると解すべきである。これに反する控訴人の主張は採用できない。また控訴人は、確定日附は債権譲渡の通知書が被通知人に到達する以前にその通知書上に現存することを要すると主張するけれども、民法第四六七条第二項が債権譲渡の通知行為に確定日附のある証書を要するとしているのは、必ずしもその通知のときまでに確定日附があることを要するとしているわけではなく、確定日附のない証書によつて通知がなされても、その後その証書に確定日附が付されれば、その日附以後所定の対抗力を生ずる趣旨に解されるのであるから、控訴人の右主張も採用しがたい。
(小川 小林 川口)